諸説イントラセレブラルソィル4

諸説イントラセレブラルソィル

作 奇妙フイルム

 

 

4.

三月が始まる頃、獣害のニュースが立て続けに報道された。

関東・甲信越地方のあらゆる場所で、熊が町に下りて人を襲った。

本来なら、本州に棲息するニホンツキノワグマは人を食料としない。

襲われる場合のほとんどの原因は、人に対する恐怖からくる防御だ。

時折、興味津々の幼児のように玩具として弄ぶこともある。

だがある日、とある小さな町で人が食害された。

山間だがコンビニさえある栄えた町だ。

実際その熊は、目撃者によると、まるで戦利品のように人体の一部を咥えて山へと去っていった。

後に地元のハンターに射殺されたその熊の胃袋には人体の形跡はなかった。

マスコミは、自然破壊が原因だとか異常気象のせいだとか、まったくさっぱり頓痴気な意見を垂れ流していたが、とあるAMのラジオパーソナリティは、熊にだって考えがある。と、真っ当な意見を述べていた。

結果的にはツキノワグマによる人身事故と片付けられた。

同じころ、五十頭をゆうに越える猪の大集団が田畑を荒らし、芽吹いたばかりの作物を摘み取るように食べ、鹿が車道へ、まるで自殺でもするかのように飛び出して、車と衝突事故を巻き起こしていった。

猪は家族以外と群れないし、鹿は臆病だ。どうして彼らがそんなことをするのか。

その通り。

猪には猪の、鹿には鹿の考えがあるからだろう。

さらに補足すると、変わらぬものなどなにもない。恥じらいもなくかっこつけて言えばだが。

 

 

 

つづく