詩にゆくものへの祈り6

偽善の弓

 

 

 

 

ありふれたなんの変哲もない土や泥のにおい

 

朝露にぬれて艶る青葉のかほり

 

君は見やったあとにしばらくしてから顔をゆがめる

 

鼻をつまんで不快そうにくさいとつぶやいた

 

はじめ君のしぐさがなんことについてかわからなかった

 

やがてそのしぐさがなんのことか理解できた

 

だからといってとくに悲しいとは思わない

 

ただし君のことをこれっぽっちも理解できない

 

種類がちがう構造が別のいきものに見えた

 

なぜ君をそういうふうに思えるのは

 

ずっと昔に君のことを諦めていたからだろう

 

日々のなかには踏みしめる土もなく手で触る草木もない

 

理路整然でシステマチックな毎日がある

 

無駄もなく時間も短縮されているからたちどまってよそみをする必要がない

 

無味無臭でシステマチックな毎日がある

 

ところで感ちがいしないでほしい

 

自然推奨テクノロジー蔑視では決してない

 

たとえばとある夫婦が都会をすてて一念発起で沖縄に移住

 

一年後には馴染めずに都会へとんぼがえり

 

その土地にのこされた新築

 

そこには以前自然の木々が生えていた

 

たちどまって一息ついてながめればそこには

 

花壇の花

 

空の雲

 

夜の星

 

とにかく君にはバランスが重要だ

 

諦めずに根気づよく明日君にそう話すことに決めた