マンチェスター・バイ・ザ・シー
劇中で女性の尻をズボンのベルトで打つ。
別の女性の首を殺すために絞める。
保身のために殺人を厭わない。
主人公の保安官・ルーは衝動で人を傷つけ殺す。
暴力的で厭な場面をアクセントとする映画。
俺の中にいる殺し屋というタイトル。
「キラー・インサイド・ミー」は殺人衝動を押さえられない秩序が主人公。
という矛盾を抱えて保身に走るが破滅の道を行く滅法面白い映画だった。
主人公の目が印象だった。虚無なのにバイタリティがみなぎっている。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」は気まずさで成り立っている映画だった。
会話のない気まずさ。
余計な一言の気まずさ。
再会の気まずさ。
理解し合っているのに気まずい。
愛し合っているのに気まずい。
ただそこにいるだけで気まずさが漂う。
10分に一回ペースで起こる荒唐無稽な銃撃戦や爆発よりも同じペースで起こる対人との気まずい空気のほうがよっぽど暴力的だ。
贖罪だけで生きる主人公・リーを「キラー・インサイド・ミー」と同じケイシー・アフレックが演じている。
物語の設定もキャラクターの感情表現もまったくの別人格なのだがたたずまいは同一人物だと感じた。
同じくケイシー・アフレックの主演作品「ゴーン・ベイビー・ゴーン」では頭脳明晰な私立探偵を演じていてまったく別のキャラクターだったがやはり同一人物だった。
彼が演技貧乏で「何を演じてもキムタク」タイプでなくキャラクターを自分に寄せることができる役者なのだと確信した。
ちなみに浅野忠信も同種と推測する。
彼がヤクザを演じた「殺し屋1」と刑事役であるテレビドラマ「刑事ゆがみ」は同一人物だろう。
だた残念なのは今作でアカデミー賞主演男優賞を獲ってしまったために大作ばかりに出演しこのような地味な映画に出演しなくなってしまうかもしれない。
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